樸堂コトノハ

− 等身大の佛教 −

20回の深呼吸

以前この欄に「怒らない功徳」という拙文を載せたことがあります。

一切怒らない生活をしようということでありますが、つい先日、大きな怒りの波に飲み込まれてしまいました。

ここで怒ってしまったら一切が台無しになるということは重々分かっているにもかかわらず、頭に血が上ってしまうと、もうどうしようもないのですね。

その怒りの原因は、相手方が、余りにもマイペース、自分勝手で、話し合いの場の時間設定もこちらが合わせているにもかかわらず、約束の時間を過ぎても何の連絡も無し。

いよいよこちらから連絡を取ると、「もうすぐそこに来ているから」という返答の後、さらにそれから数十分待たされるという始末…。

私は、約束の場所に何時間も電車を乗り継いで来ていたわけでありますが、これはもう話し合いの所期の目的は達成されなくとも、相手の無礼について一言言わせてもらって帰ろうと、会談に臨むことにしました。

この時私は、自分の怒りの心情が最高点に達していて、話す声が抑えようもなく震えていることを感じていました。

しかし、相手の待つホテルのロビーに向かう通路を歩きながら、私はふと自分の力量を試されているということを直感し、以前知り得た『怒りの抑え方』を実践してみようと思いつきました。

それは「ゆっくりと20数える」という方法です。

私は、通路の片隅に身を避けて立ち止まり、どうせたくさん待たされたのだから、今度は相手を多少待たせても構わないだろうと腹に決めて、20回の深呼吸(口から大きく息を吐いて、鼻からゆっくり息を吸う)をたっぷりとしました。

すると、それでもまだ体の中に怒りの感情が残っているとは思いましたが、体全体が深呼吸の前とはかなり違う様子となり、すっかり台無しになってしまったであろう話し合いが、何ともスムーズに終わったわけであります。

「20回の深呼吸」の効果がてきめんに現われた格好になりました。

…ここで怒ってはいけないと思いながらも、その方法論となるとなかなか難しいものです。

この「20回の深呼吸」は、皆さんにもおススメの方法ではないかと、ご紹介申し上げた次第です。

20回の深呼吸