私がお寺での生活をさせて頂くようになった当初、色々と初めてのことばかりでしたが、中でも食事の際、テレビなどつけず、会話もせず、ただ黙々と食事を頂くことに大変な戸惑いを感じました。
それまでの生活では、美味しいものを楽しく食べたいという意識がいつもあって、それが体にいいことなのだと思い込んでもいました。
美味しいものがいつも体にいいと言えないことは年齢を重ねるにつれて徐々に分かってきましたが、テレビを見ながら、あるいは楽しく会話をしながら食事をするのがどうしていけないのか、お寺での生活を10年も20年もしながら、本当には分かっていなかったような気がします。
ところが先日、少し時間があったので本屋さんに立ち寄ったところ、大量に陳列されている数々の本を足早に通り過ぎようとしていると、ある本の題名が目に飛び込んできて、思わず本を手に取りました。
本の題名は『長生きしたけりゃパンは食べるな』で、私は特に長生きしたいとも思っていないのですが、時折、こんなふうに本と出会うことがあります。きっと何か私にとって必要なことが書かれてあるのではないかと素直に受け取って、買って帰ることにしました。
本には色々と興味深いお話が載っていましたが、著者のフォーブス弥生さんはその「おわりに」の中で、「まず大事なのは、あなたが目の前の「食事」にきちんと向き合うことです。」と言われており、この言葉が私の心に重く深く残りました。
そして「食事に意識を向けるために、やってはいけないことがあります。」として、「テレビを見ながら食べること」「スマホやパソコンをいじりながら食べること」「新聞や本を読みながら食べること」と、重ねて注意をして下さっています。
これらの言葉は、私に、ただ黙々と食事を頂くことの大切さを、真正面から気づかせて下さいました。
自分が頂く食事ときちんと向き合うということ。私の現在の体は今まで頂いてきた食事の集大成であり、これから頂く食事が明日の私の体を作っていくということ。
一つ一つの食材ときちんと向き合いながら食事を頂くことは、本当に素晴らしいことだと、改めて気づかせて頂きました。