〈山梨県・山中の寺(番外編)〉
山の中のお寺にお世話になってから半年ほど経った頃だったでしょうか、海外からの参禅者(坐禅を経験するために来山した人)が非常にたくさん来られた時期がありました。
ある時、昼の飯台(はんだい・食事のこと)に集まったメンバーを眺めて、こんな山奥のお寺のほんの一室に何と多種多様な人たちが顔を揃えているものだと、目を見張りました。
飯台の後、ちょっとした興味から皆さんの国籍を尋ねてみると、アメリカ、イギリス、イスラエル、インド、カナダ、スペイン、ブラジル、フランス…といった答えが返ってきて、私を含めた9人がすべて違う国籍でした。さすがに、これには私も驚きました。
人生のすべての瞬間が「一期一会」であるにしても、この「一期一会」はなかなか珍しいものだと思わずにはいられませんでした。
私は、中学生レベルにも満たないような英語を駆使して、それらの人々の食事の世話から日常の様々な面倒を見させていただきましたが、拙い英語でも、お互いに違う国の人間ですから、インドなまりやブラジルなまりそして日本なまりの英語を相手に分かるように話すので、案外不便は感じないものでした。
そして、滞在が数日にわたるとこちらも結構大変でしたが、典座寮(てんぞりょう・お寺の台所)で仕事をしている私のところに帰り際に立ち寄って、
Thank you for your good cooking.
(美味しい食事をありがとう)
などと言っていただいた上にさらに握手を求められることもあり、優しい気遣いの中で山を下りて行かれた方のことなどは、今でも有り難い思い出の一つになっています。
Thank you for your good cooking.